2011年11月09日

メッシの右ウイング起用をオススメしない理由 〜ビルバオvsバルセロナ〜



 アスレティック・ビルバオは4-5-1、対するバルセロナは4-3-3の布陣となっている。サン・マメスにおける両チームの対戦成績は、ビルバオの41勝17分け22敗。ただし、最近10シーズンに限ればビルバオの1勝6分け3敗となっている。

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 [Goal.com] 6日に行われたリーガエスパニョーラ第12節、アスレチック・ビルバオ対バルセロナの一戦は、2−2の引き分けに終わっている。

敵地サン・マメスを訪れたバルセロナは、降りしきる雨の中、ビルバオの厳しいプレスに苦しめられる。水びだしのピッチで、いつもの流ちょうなボール回しは鳴りを潜め、肉弾戦を仕掛けるビルバオ守備陣に決定機を作らせてもらえない。すると19分には、ビルバオに先制を許してしまう。

中盤でボールを奪ったビルバオは、左サイドに走ったスサエタに素早くつなぐ。スサエタはA・エレーラにパスを送り、これをA・エレーラがエリア外からゴール右隅に決めた。このA・エレーラの得点により、GKビクトル・バルデスの続いていた無失点記録が途切れている。

バルサは失点後も、ビルバオの積極的な守備と不良なピッチに苦戦したが、25分に同点に追い付く。左サイド、アビダルの上げたクロスが、中央のセスクにピンポイントで届き、セスクのヘディングシュートが鮮やかに決まった。バルサは前半のうちにスコアをタイに戻して後半へ向かう。

後半に入ると、ピッチ状態はますます悪化する。ボールが止まってしまう場面も多々見られる展開で、両者ともに決定的なチャンスを生み出せない。バルサは63分にシャビを下げてアレクシスを、71分にはアドリアーノに代えてビジャを投入して攻撃を活性化しようと試みた。だが、スコアをリードしたのは、またしてもビルバオだった。

78分、ビルバオ陣地に押し込んでいたバルサは、一旦失ったボールをマスチェラーノが中盤で奪い返すも、GKバルデスに送った長いバックパスがそれてビルバオにCKを与えてしまう。このCKで中央に送られたボールを、アビダルがクリアしようと左足を振り抜くと、それがF・ジョレンテに当たってそのままゴールインする不運な形で失点した。

失点直後の80分、バルサはピケに代えてチアゴをピッチに送り込んで最後の攻撃に出る。イニエスタ、ビジャが立て続けに決定機を迎えるも、GKイライソスの好守に阻まれ得点には至らない。誰もが敗北を覚悟した瞬間、バルサの10番がチームを救った。

後半ロスタイム、中盤でボールを持ったメッシは、エリア内のイニエスタにスルーパスを出す。このパスをイニエスタが1タッチで前方に送ったものの、味方の反応がなく中途半端な位置にボールが転がる。するとこれが功を奏したか、GKイライソスとビルバオDFの混乱を誘い、ボールは最初にパスを出し走り込んでいたメッシの足元へ。メッシは迷わず左足でシュートを突き刺し、土壇場での同点弾を叩き込んでみせた。

バルサは敵地サン・マメスを攻略しきれずも、難しいピッチコンディションと勇敢なビルバオイレブンを前に、辛くも勝ち点1を獲得している。



 ビルバオはマンマークをベースとする守備戦術を採用。前線から選手個々に厳しいマークにつくことで、バルセロナは余裕をもってプレーが出来ていなかった。ゾーンとは違い人をマークするこの守り方によって、

 @パスのインターセプトA簡単に前を向かせない

 豪雨によりボールが止まってしまうほどの悪質なピッチ状態という条件はあったにせよ、ビルバオの守備はバルサ相手に機能しており、上記の二点を遂行できていた。また、完全なマンツーマンではなく、受け渡せるところは柔軟に対応していた点も非常に組織化されていると感じた。

 そのため、普段のバルサがみせる圧倒的なポゼッションをビルバオが阻止(それでも90分を通してバルセロナは59%を保持)。これにより、守備の時間が多くなるバルセロナ。すると、普段は全く気にならないメッシのディフェンスが目につくようになる。メッシは守備が免除されているぶん、対面するビルバオの左SBアウルテネチェがオーバーラップした時にマークについていくことがないため、フリーになる場面がある。その際には右CHのシャビか右SBのアウベスがケアをしていた。そうすると、他の選手たちも右寄りにポジションをずらし逆サイド(バルセロナの左サイド)が大きく空くというシーンが見られた。

 ただし、ビルバオのこのディフェンスは、選手のファウル・トラブルとスタミナが心配の種。2010年の南アW杯でも、ビエルサ率いるチリ代表がスペインに対して善戦したものの、激しい守備が仇となり前半37分に退場者を出してしまい1-2で敗れたのは記憶に新しい。

 ビエルサが試合の前に「バルセロナにボールを持たせない。自由にさせない」とコメントしていた一つの目標はこれで達成されたわけだが、サッカーは得点を奪わなければ勝つことができない。

 ビルバオの選手たちは攻撃への意識が高く、チャンスがあれば積極的に前線へ飛び出していき、まさにビエルサのサッカーを体現していた。オフェンスの起点となったのは前述のアウルテネチェによる質の高いクロスと、ドリブルの技術に優れボールをキープできる右SHのムニアイン(U-21スペイン代表)の突破、ジョレンテの高さだった。

 前半5分、メッシへの縦パスをアウルテネチェがインターセプト。ジョレンテにくさびのパスを入れてから、オーバーラップしてきたアウルテネチェが左サイドでボールを受けて中央へクロスを試みる。このボールはアウベスがハンド気味にブロックしたことで味方に合うことはなかったが、この時、ゴール前にはジョレンテ、ムニアイン、デ・マルコス、アンデルの4枚が走り込んでいて攻撃に厚みをもたらしていた。

 また、9分には攻め残っていたアウルテネチェがフリーの状態でアーリークロスを入れる。このボールはジョレンテにピンポイントで合わせて好機を演出。この時点ですでに3本のクロスを配給していた。

 36分には中盤でカットするや、アウルテネチェがすぐさま前線へ駆け上がる。これに対してマスチェラーノとピケは外に釣り出され、中央がアビダル1枚と薄い状態となる。そこへ右サイドから斜めに走り込んできたムニアインに絶妙なスルーパスが出されてGKと一対一になるも、ジャストミートできずに得点には至らなかった。

 リーガ屈指の高さを誇るジョレンテに対してピケはほとんど競り負けていて、空中戦においてはビルバオに分がある。それに加えて、アウベスは高い位置にポジションをとるため、バルセロナの右サイドのスペースは大きな狙いどころとなる(マスチェラーノがワイドに開くことで対応はしていたが…)。そのため、アウルテネチェのクロスはバルセロナにとってかなり厄介なプレーとなっていた。

 つまり、メッシのサイド起用はアウルテネチェのオーバーラップを容易に許していることでバルサの失点する確率を高めており、この試合においては適切なスタート・ポジションではなかったと言える。とはいえ、エースのメッシを外すことはケガ以外には考えにくいわけで、選手の並びに修正の余地があったのではと考える。

 グアルディオラはこの試合で初めてブスケツ、シャビ、イニエスタ、セスクのスペイン代表の4人全員を中盤に揃えてきた(4-3-3というシステムだが、3トップの中央はMFともいえる)。イニエスタ以外はサイドのポジションにそぐわない選手たちなので、必然的にメッシがサイドに回ることとなったと言えるかもしれない。対戦するチームによって変わるものだが、この試合においては“守備に戻らないメッシ”を中央に置き、イニエスタを左WG(アドリアーノを右に)、セスクをCHで起用した方が安定したのかもしれない。

 ただ、61分にサンチェスが投入されてメッシが真ん中にポジションを移してからは、右サイドの守備は改善されていた。
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 話はずれてしまうが、このカルテットとバルセロナのエースを共存させるには、3-4-3で見せる“ダブル・トップ下”にセスクとメッシを並べる布陣が一番バランスが良いのだと感じた。しかし、連戦によるビジャの疲労やサンチェス、ペドロ、アフェライの故障によってサイドプレーヤーが極端に少ないチーム状況を考慮したうえでの采配だったかもしれない。

 それにしても、今季のグアルディオラは選手の入れ替えを大胆に行なっている印象だ。休ませる時はしっかりと休息を与え、トップチームの選手たちを上手くターンオーバーさせている。12月に控えるクラブW杯との兼ね合いもしっかりと視野に入れているのだろう。引き分けはしたが、進化を模索し続けるペップの指揮はやはり面白かった。

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2011年10月07日

今季のガナーズはトップ4転落の危機!? 〜トットナムvsアーセナル〜



 リーグで開幕2連敗を喫したトットナムだが、その後は3連勝を飾り公式戦では6ゲーム負けなしと、徐々に調子を上げてきている。ミッドウィークに行われたヨーロッパ・リーグのシャムロック(アイルランド)戦では、若手を中心としたメンバーで戦っており、選手のコンディションは良い状態で臨める。

 一方のアーセナルは主軸であったセスクやナスリらを放出した影響が大きく、ここまでのプレミアリーグにおける成績は2勝1分け3敗と低調ぎみ。また、DF陣を中心に負傷者が多く、守備面では大きな不安を抱えている状況だ。

★アーセナルの主な故障者

DF ベルメーレン
DF コシェルニー
DF スキラッチ
MF アブ・ディアビ
MF ジュルー
MF ウィルシャー

 なお、ノースロンドン・ダービーにおける両チームの対戦成績は、スパーズの47勝41分け60敗となっている。

 トットナムはファンデルファールトが右サイドのポジションに入り、アデバヨールとデフォーによる2トップの4-4-2、対するアーセナルは欧州CLのオリンピアコス戦と同様にA・ソングをCBに起用し、コクランという選手を中盤の底に据えた4-3-3という布陣だ。

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 アーセナルは攻撃の中心であったセスクとナスリが抜けても、パスで崩そうとするスタイルは継続。北ロンドンに本拠を置くライバルチームとの好カードで、チームとしての真価が問われる一戦となった。


 7分、トットナムはA・ソングのパスミスをカットしたファンデルファールトが、高い位置に残っていたパーカーへスルーパスを送る。GKと一対一となるも、右足のシュートはシュチェスニーに阻まれる。

 さらに28分、モドリッチの浮き球のパスに、スペースの空いた右サイドをデフォーが走り込む。相手DFを抜ききらずに低いクロスを送ると、ニアに走り込んだファンデルファールトが左足のアウトで合わせたが、これもシュチェスニーがセーブ。

 一方のアーセナルは29分、左サイドを独力で突破したファンペルシーが相手陣内の深い位置までドリブルで運び、敵を引きつけてゴール前のスペースへマイナスのパス。ペナルティエリア内に走り込んだジェルビーニョがフリーの状態でシュートを打つも、枠を捉えることができず。

 続いて34分、右サイドの高い位置で受けたウォルコットが中央にカットイン。DFのマークを瞬間的に外して左足でのミドルシュートを打つものの、ゴール上に外れる。

 トットナムは40分、自陣のスローインからパスをつなぎ、DFとMFの間でボールを受けたデフォーが右に開いていたアデバヨールにボールを渡す。これを逆サイドに走り込んでいたファンデルファールトへ柔らかいパスを送り、正確なトラップから左足を振り抜いて先制に成功する。



 前半のアーセナルはボールを支配してパスを回すことには成功していたが、最後の攻撃の部分で手詰まり感の否めない印象。また、サイドバックの上がったスペースを突かれ、CBが釣り出されることで中央の守備が薄くなっているシーンが目立った。それでも、CBが本職ではないA・ソングが広範囲に渡って守備に気を使っている印象で、アデバーヨール相手にもファイトしているプレーは素晴らしかったと思う。

 ただ、気になったのは両CBの位置だ。流れによってポジショニングは変わるが、トットナムは右のFWにアデバヨール、左のFWにデフォーを置いていた。それに対し、アーセナルは左CBのA・ソングがアデバヨールを、右CBのメルテザッカーがデフォーを基本的にはマークする状況となっていた。

 選手の特性を考えれば、このマークを逆にした方が対応はしやすいはずだ。また、アーセナルはベイルの突破を警戒したのだろう、右SBのサーニャが開き気味に守備をしている印象。そのため、右CBとの距離が開いて、そのスペースをデフォーに使われる可能性があった。ベイルのドリブル突破や空いたスペースを埋めるには、出足の鋭いA・ソングを右CBに回せばスタートの布陣よりは安定したのではないか。

 後半に入ると、そのベイルがさっそく躍動する。
 49分、左サイドでボールを受けたベイルが一対一を仕掛け、ペナルティエリア外から強烈なミドルシュートを放つも、ボールはわずかにゴール上へ。

 劣勢だったアーセナルは51分、CKの流れのこぼれ球を拾ったA・ソングが左サイド突破して低いクロスを入れると、ニアに走り込んだラムジーが押し込み、同点に追いつく。

 一方のトットナムは57分、高い最終ラインの裏を狙ったファンデルファールトのボールをベイルが受けると、中央のアデバヨールへ横パス。GKと一対一となるが、シュチェスニーがまたも好セーブをみせ追加点とはならず。

 追い上げムードのアーセナルだったが、66分にサーニャがアス=エコトと競り合って着地した際に右足を痛めてしまい、自ら代えてくれというサインを出してジェンキンソンとの交代を余儀なくされる。

 逆にトットナムは73分、モドリッチのシュートブロックされたボールを右SBのウォーカーが拾うと、ゴール前やや右側の位置から勢い良くミドルシュートを放つ。GKの守備範囲内ではあったが、シュートスピードが速く軌道がぶれていたため、シュチェスニーはキャッチングできずにゴールを許してしまった。
 
 さらに76分、フリーデルのロングフィードをアーセナルの両CBが処理を誤り、抜け出したベイルがシュートを打つも、わずかにゴール右へと外してしまう。

 再びリードされる展開においても、アーセナルはシステムを代えないままで臨んだ。というよりも、負傷交代でカードを1枚きっていたため、代えたいけど代えられなかったという表現が正しいのだろうか。
 2点目を奪われた後は2トップにしたいところだったが、CFに適役な選手は実績に乏しく信頼を勝ち得てないパク・チュヨンしかおらず、少しでも可能性のあるアルシャービンに賭けようという采配に感じられた。

 対するトットナムは85分にアデバヨールを下げてリバーモアを中盤の右サイドに置いた4-2-3-1にして試合をクローズにかかる。アーセナルも88分にはメルテザッカーを前線に上げた4-4-2で2点目を狙いに行くも、
ロングボールを放ることのない攻撃が続き、高さを全く活かせていなかった。

 レドナップ監督は90分にチョルルカを入れてメルテザッカーの高さ対策にかかり、そのまま2-1で試合が終了してトットナムが逃げ切りに成功した。

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 ダービーという大事な一戦で敗れた上に、主力のDFにまた新たなけが人が出るなどアーセナルは本当にツキがない(サーニャは右足の腓骨骨折で3ヵ月の離脱のようだ)。アーセナルとしては、負けた原因がサーニャの負傷交代によるところが大きいと言いたいところだが、この日のベンチメンバーを見ると、万全な選手交代を行なっても勝つのは難しそうに感じた。シャマフの欠場はなぜだろう。それに、いまだにリーグ戦と欧州CLで出番のないパク・チュヨンの獲得はアーセナルに必要だったのだろうか。代表のゲームしか観たことないが、高さもプレミアの中では並みのレベルだし、かといってスピードに優れてるわけでもないという印象なのだが…。

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2011年10月01日

両GKの素晴らしい活躍で攻撃陣はトホホ… 〜バレンシアvsチェルシー〜



 9月21日に行われたリーガでのバルセロナ戦では、2-2の引き分けと善戦したバレンシア。しかし、先週末に行われたリーグ戦においてセビージャに土をつけられ、今シーズン初の黒星を喫した。

 対するチェルシーはプレミアリーグのスウォンジー戦で4-1の大勝を収め、フェルナンド・トーレスが2試合連続で得点をマークしているほか、脳震とうの負傷から復帰したドログバが早速ゴールを決めるなど、まさに万全の態勢。国内での勢いそのままにメスタージャに足を踏み入れる。

 なお、チャンピオンズリーグにおける両チームの対戦は2007年以降で4度あり、バレンシアのホームで戦った2試合はチェルシーがともに2-1の勝利を収めている。また、ブルーズは過去6度のスペイン遠征で2勝4分けと無敗をキープ。敵地スペインで最後に敗れたのは、2005年に0-1で敗れたベティス戦までさかのぼる。

 バレンシアはカナーレスをトップ下に配置した4-2-3-1、対するチェルシーはマルダが3トップの一角に入り、ランパードがスタメンに復帰。また、GL第1節のレバークーゼン戦に続き、ダビド・ルイスがCBに入った4-3-3のシステムとなった。

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 開始まもない3分、アルベルダが相手のプレスに対し、最終ラインへ出したパスがまさかのミスとなる。最前線のトーレスがボールを拾ってゴール前へ突破するも、ファーストタッチに失敗してシュートは打てず。最近の悪いプレーがクローズアップされるトーレスの“らしくないミス”に何とか助かったバレンシア。

 チェルシーは第1節のレバークーゼン戦で勝ち点3を獲得しているのに加え、アウェーということもあってか、トーレスを前線に残して2列目より後ろの9人が自陣でブロックを作り、守備を重視する戦いを選択してきた。

 そんなチェルシーの人数をかけたブロックを崩せないバレンシアは、25分に好機を迎える。左サイドでマテューとカナーレスのボール回しから抜け出したジョルディ・アルバが低いクロスを送ると、ニアサイドに走り込んだパブロ・エルナンデスが右足で上手く合わせるも、ボールはサイドネットへ。

 バレンシアの選手たちはサイドを崩してチャンスを見出そうとするも、チェルシーの堅い守備に阻まれて、前半の決定機はこの1度きりしかなかった。ただし、チェルシーも守備に重きを置いているぶん、チャンスは相手のミスによるものとセットプレーのみだった。

 後半に入ると、チェルシーは守備のラインを上げ、ボールを高い位置で奪うように仕掛けてきたことで、一気にオープンな試合展開となっていく。

 51分、チェルシーはボジングワがハーフウェーライン付近で相手のボールをカットすると、そのまま持ち込んでクロス。中央のトーレスが頭で完璧に合わせるもGKジエゴ・アウベスのファインセーブによって防がれる。また、直後の53分、カウンターからランパードの浮き球のパスにラミレスが裏に抜け出してGKと一対一になるものの、シュートはジエゴ・アウベスの身体に当たり得点とはならない。
 
 さらに、54分にはトーレスがドリブルでゴール前へ仕掛けてDFにカットされるも、こぼれ球を拾ったランパードが中央へ柔らかいパスを送る。これを上手くおさめたトーレスがボレーシュートを放つも、ふたたびジエゴ・アウベスが素晴らしい反応みせゴールを許さない。

 しかし、56分についにゲームが動き出す。チェルシーはマルダが右サイドから仕掛けてグラウンダーのクロスを送ると、バレンシアの守備陣は誰も触ることができずボールが流れる。これを待ち構えていたランパードが、ダイレクトでシュートを放ち先制に成功する。



 その後はバレンシアが前線に人数を掛け、同点を狙う展開となっていく。ここでエメリ監督はマテューに代えてピアッティをピッチに送り込む。ただ、1点をとったことでチェルシーは前半のように自陣にこもることが予想されたため、裏へのスペースがないとスピード系のピアッティ投入はあまり効果がなさそうに感じた。また、バレンシアの中では、高さで戦うことのできる貴重なマテューを下げため、少々もったいない気がした。

 それよりも、53分のラミレスの飛び出しについていけなかったバネガを早々に下げて、カナーレスを同ポジションに移し、ジョナスをトップ下に据えるというのはどうだったろうか。アルベルダが警告を1枚もらっていたこともあり、バネガの守備のサボリがどうしても気になってしまった。

 しかし、意外にもチェルシーは高い位置をキープしたままということもあって、ピアッティや裏への飛び出しを得意とするソルダードが活きるゲーム展開となっていく。

 71分、低い位置で受けたカナーレスがDFラインの裏に浮き球のパス。交代して入ったピアッティが胸でワントラップ後に右足を振り抜くも、GKチェフが指先でボールに触りゴール上へ。

 75分、ソルダードからフリーでボールを受けたフェグーリがミドルを放つ。DFに当たってコースが変わったことで逆をとられるも、態勢を崩さなかったチェフがしっかりキャッチ。さらに76分、ジョルディ・アルバのスルーパスに左サイドの高い位置でボールを受けたジョナスが中央へクロス。ピアッティがダイレクトで合わせるもボールはわずかに右へ外れる。

 決定機を何度も招きながらもビラス=ボアス監督は守備を固めることなく、メイレレスとアネルカの投入に続き、83分にランパードに代えてカルーをピッチへ送り込む。マルダが中盤の位置に下がってカルーを右ウイングに配置してきた。しかし、試合は相変わらずバレンシアのペースで進み、チェルシーが守る展開のまま。

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 85分、バレンシアは競り合ったこぼれ球をカナーレスが拾い、意表を突くヒールパスでゴール前のジョナスへ。これに反応したジョナスがコースを狙ったミドルシュートを放つが、これもチェフが横っ飛びで好セーブを見せる。しかし、チェルシーはそのコーナーキックから、ハイボールを競りにいったカルーにハンドの判定が下されPKを与えてしまう。これをソルダードが落ち着いて決めて、バレンシアは1-1の同点に追いつく。

 チェルシーは90分に、カルーとのコンビネーションからアネルカが一対一の決定機を迎えるも、またもジエゴ・アウベスが素晴らしいセーブでゴールを割らせず。チェルシーは最後にセットプレーのチャンスを得るものの、主審が試合終了を告げたことで同点のままゲームを終えた。

 アウェーで勝ち点1という結果は悪くはないものの、追いつかれてしまっただけにチェルシーとしては悔いの残るゲームとなってしまった。一方のバレンシアは、ピンチの多さとチェルシー相手ということを考えれば、引き分けは妥当な結果だろう。なお、MVP級の活躍を見せた両チームのGKのセーブ数はジエゴ・アウベスが8、チェフが7となっている。

 それにしても、ビラス=ボアス監督は1点をリードした後はどのようなゲームプランを考えていたのだろうか。交代を見ると攻守のバランスを維持したままのようだったが、相手選手の特徴を見れば高さでは完全に分があったため、引いて守り続けたほうが良かったと思うゲームだった。

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posted by el_tiqui_taca at 08:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州CL | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする